「昔と同じダイエットをしているのに、なぜか痩せない…むしろ増えている」
30代を過ぎて、こんな理不尽な現象に悩んでいませんか?「年齢のせい」や「代謝が落ちた」の一言で片付けてしまうのは簡単ですが、実はその裏には、腸内環境の変化による「あるシステムのエラー」が隠れているかもしれません。
今回は、最新の研究で明らかになった「痩せない本当の原因」と、医療ダイエットでも話題のGLP-1を自前で作り出す方法について解説します。

博士。私、もしかして光合成でエネルギーを作れる体に進化したのかもしれません。

……いきなりどうしました? 植物になったんですか?

いえ、真剣な話なんです。

ここ1ヶ月、夕食の糖質を控えて、週末はジムにも行ってるんですよ?
なのに体重が減らないどころか、増えているんです。「水を飲んでも太る」って都市伝説だと思ってましたけど、今の私がまさにそれです。

なるほど。「昔と同じ努力をしているのに結果が出ない」。
30代以降の女性の多くがぶつかる壁ですね。

そうなんです! 「代謝が落ちた」の一言で片付けたくないんですけど、やっぱり年齢のせいなんですか?

年齢もありますが、より根本的な原因は「腸内環境の変化による代謝システムの不具合」にある可能性が高いですよ。

カロリー計算をする前に、まずは体の「燃焼スイッチ」がオフになっていないか確認する必要があります。
「痩せ菌」神話の誤解。本当に必要なのは「短鎖脂肪酸」

腸内環境といえば……博士、私が毎日ヨーグルトを食べて「痩せ菌」を応援してる件、褒めてくれませんか?

努力は素晴らしいですが、少し惜しいですね。
実は、最新の研究では「痩せ菌がいるだけ」では不十分だとわかっているんです。重要なのは、その菌たちが作り出す「短鎖脂肪酸(たんさしぼうさん)」です。

「短鎖脂肪酸」……あー! はいはい、出ましたね。
博士、それ耳にタコができるくらい言ってますよね? もう親戚の名前より聞いてる気がします。

それほど聞いているなら、その働きについても詳しく覚えているんでしょうね?

うっ……。確か、「とにかく腸にいいすごいヤツ」でしたっけ?
正直に言うと、名前の響き以外は右から左に受け流してました。「便秘に効く」くらいしか記憶になくて……。

正直でよろしい。では改めて言いますが、これは単なる整腸剤ではありません。
実は、「脂肪細胞への命令シグナル」になっているんです。

え、命令? ……待ってください。それって「便秘に効く」とかいう次元の話じゃなくて?

ええ。短鎖脂肪酸が血液に乗って全身を巡ると、脂肪細胞にあるセンサー(受容体)に働きかけて、「これ以上、脂肪を溜め込むな!」とブロックしてくれるんです

さらに、交感神経にも働きかけてエネルギー消費(代謝)を高める作用もあります。これについては、日本の研究チームが非常に重要な発見をしています。
参考研究:短鎖脂肪酸による脂肪蓄積の抑制
Kimura I. ほか “The gut microbiota suppresses insulin-mediated fat accumulation via the short-chain fatty acid receptor GPR43”
Nature Communications, 2013.
【要約】
腸内細菌が産生する短鎖脂肪酸(酢酸など)が、脂肪細胞にある受容体(GPR43)を活性化させることで、インスリンによる過剰な脂肪蓄積を抑制し、肥満を防ぐメカニズムを解明した研究。

ええっ!? ただの「お腹の調子を整えるヤツ」だと思って油断してました。ダイエットに効果があるなら、もっと強調して言ってくださいよ!

も、申し訳ない……。

つまり、善玉菌(キムチや漬物、ヨーグルトなどの発酵食品)だけ入れても、彼らが食べる「水溶性食物繊維(海藻、大麦、ゴボウなど)」がなければ、この最強のダイエット成分は生まれないんです。
医療ダイエットで話題の「GLP-1」は、自前で作れる

脂肪を溜め込まない話で思い出しましたが、最近クリニックで流行っている「GLP-1ダイエット」ってどうなんですか? 薬や注射で痩せるって聞きますけど、高額だし、正直どうなのかなって。

GLP-1は「痩せホルモン」とも呼ばれ、脳に満腹感を伝えたり、血糖値をコントロールしたりする素晴らしい物質です。
でもなおみさん、このGLP-1、実は私たちの腸からも分泌されているんですよ。

え? わざわざ注射しなくても、自分の体で作れるってことですか?

そうなんです。腸の壁にある「L細胞」という場所が刺激されると分泌されます。
そして、そのスイッチを押してくれるのが、先ほど話した「短鎖脂肪酸(特にプロピオン酸)」や食物繊維なんです。
参考研究:腸内発酵産物による食欲抑制ホルモンの分泌
Chambers ES. ほか “Effects of targeted delivery of propionate to the human colon on appetite regulation, body weight maintenance and adiposity in overweight adults”
Gut, 2015.
【要約】
腸内で短鎖脂肪酸の一種(プロピオン酸)を増加させると、GLP-1やPYYといった食欲抑制ホルモンの分泌が促進されることを確認。これにより、高カロリー食への欲求が自然と低下し、体重増加の防止に寄与することが示された。

なるほど……。「我慢して食べない」んじゃなくて、腸を整えれば「自然と食欲が落ち着く」ってことですね。

それが本当なら、食費も浮くし一石二鳥じゃないですか!

まさに「腸活」こそが、最もコストパフォーマンスの良いGLP-1ダイエットと言えるかもしれませんね。
「運動しても痩せない」悲劇を生む、腸の炎症

食欲の話はわかりました。でも博士、最初にも言いましたけど、私ジムに通ってるんですよ。
それでも体型が変わらないのは、どう考えてもおかしくないですか?

それは本当に辛いですよね……。
でも、トレーナーとしての視点も交えて解説すると、その原因は「腸漏れ(リーキーガット)による慢性炎症」にある可能性が高いです。

腸漏れ? なんだか怖い響きですね。

腸内環境が乱れると、腸のバリア機能が低下して、本来排出されるはずの毒素が血液中に漏れ出します。すると、体は常に火事(炎症)が起きている状態になります。

体の中で火事が……。

この炎症が起きていると、筋肉はインスリンの働きを受け付けにくくなります(インスリン抵抗性)。

すると、せっかく食事で摂った栄養が、筋肉に取り込まれず、脂肪細胞に優先的に運ばれてしまうんです。

ちょっと待ってください。それじゃあ、私がプロテイン飲んでスクワットしていた栄養が、全部「脂肪」になってたってことですか!?

全部とは言いませんが、効率が悪くなっていたのは事実でしょう。
これを裏付ける有名な研究もあります。
参考研究:腸内環境の乱れと代謝異常(メタボリック・エンドトキセミア)
Cani PD. ほか “Metabolic endotoxemia initiates obesity and insulin resistance”
Diabetes, 2007.
【要約】
腸内細菌叢の変化により血中の内毒素(LPS)濃度が上昇すると、全身性の軽度慢性炎症が引き起こされる。これが、肥満やインスリン抵抗性(筋肉等が糖を取り込めない状態)の直接的なトリガーになることを突き止めた研究。

「穴の空いたバケツに水を注ぐようなもの」ってことですね……。
まずはその「火事」を消さないと、ジム代も無駄になりますね。
まとめ

いかがでしたか? なおみさんが「食べてないのに痩せない」と感じていた理由が、少し見えてきましたか?

はい、痛いほど分かりました。「気合いが足りない」んじゃなくて、「体の中の仕組み」がエラーを起こしてたんですね。

その通りです。今日からできる、おすすめのダイエットプランは以下の3つです。
- 「短鎖脂肪酸」を増やす:
味噌・納豆・キムチ・ヨーグルトなどの発酵食品に加えて、エサとなる「水溶性食物繊維(もずく/めかぶなどの海藻類・大麦・りんご・キノコ類)」をセットで摂る。 - 「自前のGLP-1」を出す:
食事の最初に食物繊維を摂り、腸のスイッチを入れる。 - 「炎症」を鎮める:
小麦製品や加工食品を少し減らし、腸のバリアを修復する。

この3つに注意しながら運動していればダイエット効果も出るってことですね?

もちろんです! 腸を整えながら運動すれば、今度はちゃんと筋肉が応えてくれますよ。

よかった! さっそく帰りにスーパーで「めかぶ」と「もち麦」を買って帰ります。
博士、ありがとうございました!

